これからの公共サービス/インフラのカタチはどうあるべきか②(サービス統合編)
前記事では、異なる公共サービス/インフラが連携し、その持続可能性を高めようとする「異業種連携」の試みについて紹介した。近年では、こうした連携からさらに踏み込んで、複数のインフラサービスをまとめた形での官民連携事業が行われているケースもある。これらは「異業種連携」をさらに進めた「サービス統合」の可能性を示すものであると言える。
本記事では異業種連携にとどまらないサービス統合の可能性について考察する。
「異業種連携」よりさらに踏み込んだ「サービス統合」の可能性
異なるインフラサービスの業務の一部を異業種間が共同実施したり、異業種企業が受託実施したりする取り組みを「異業種連携」として紹介した。それに対し本記事では、複数のインフラサービスの事業体が経営統合したり、経営統合まではなされずとも同一主体が実務の大部分を実施するような形態をとったりしている取り組みを「サービス統合」と定義する。複数のインフラサービスを束ねることで、事業全体の効率化やコスト削減を図れることが期待されている。
例えば、妙高市の事例が挙げられる。妙高市では、民間事業者が設立した「妙高グリーンエナジー株式会社」が、ガス事業においては事業譲渡、上下水道事業においては包括的業務委託を受けることにより、ガス・水道・下水道という3種のインフラサービスを担っている。
また加賀市においては、2006年に行政サービスを補完する組織として、「加賀市総合サービス株式会社」が設立された。主な業務として公共施設の指定管理、業務受託、給食調理の労働派遣を行っているほか、2019年からは地域新電力として「加賀新電力」を立ち上げ、収益を市政に還元する取り組みも行っている(その後2022年6月からは加賀市および加賀市総合サービス株式会社が出資する「加賀ふるさとでんき」が新電力事業を行っている)。
海外に目を向けると、ドイツには地域の複数のインフラを担う官民連携出資の「シュタットベルケ」という事業体も存在する。上記で挙げた2市の試みが基本的には効率化やコスト削減によって持続可能な運営体制の確立を目指しているのに対し、シュタットベルケは、収益事業と非収益事業で内部相互補助を行うことで公共サービスの充実を図り、地域の安全にも寄与している点に特徴がある。また地域内の経済循環を促進し、地域の持続的発展に大きく貢献していることから、水インフラの未来を考える上でも参考になると考える。
複数のインフラを包括管理する「シュタットベルケ」とは
シュタットベルケとは、ドイツにおいて、地方自治体等の行政区域単位で複数の公共的なサービスの整備・運営を担う公共事業体の一つである。法的に明確な定義はないが、地方自治体が出資する事業体であり、①複数のインフラを包括管理、②損益通算や配当を通じた利益の域内還元、ガバナンス面では、③経営の執行と監督の制度的分離、などの特徴を持つ。自治体企業連合である VKU(Verband kommunaler Unternehmen)に加盟する組合企業1,458 社が相当するとされる1) 。地方公共団体が100%出資する場合もあれば、地方公共団体と民間が共同出資している場合もある。
シュタットベルケという形態は19世紀中頃に発足し、多くは自治体100%出資の企業としてドイツの地域インフラを支えてきた。1998年の電力全面自由化で激しいシェア獲得競争にさらされたが、大手企業が業界再編する中で、地域密着のサービス提供と一定以上のコスト競争力により地域顧客を獲得してきた。またFIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)導入で、再生可能エネルギーなどを事業の大きな軸のひとつに据える動きが活発化し、安定した収益をあげている。シュタットベルケの中でも、エネルギーを供給する事業体は約 1,000 社と報告されている1)。
①複数のインフラを包括管理
複数のサービスを包括管理することで、料金収受を含めた事務の共同化や、職員の多能工化による人材の効率的な配置など、全体最適の観点で管理の効率化やコスト削減が可能となる。シュタットベルケの手がける事業はその事業体によって多様であり、資金調達や顧客管理なども含め相乗効果を作り出すべく、地方公共団体の個別事情を勘案した組み合わせとなっている。
シュタットベルケが供給する主なサービス・事業例
| エネルギー | 電力、ガス、熱、スマートメーター、バーチャル・パワープラント、エネルギーマネジメント、決済サービス |
| 情報通信 | 電話、ケーブルテレビ、インターネット、郵便 |
| 廃棄物処理 | 回収、輸送、分別、リサイクル、埋設、焼却、道路清掃 |
| インフラ建設・管理 | 上水道・下水道、輸送・交通、港湾、堤防、護岸設備、街灯・防犯灯、駐車場、駐輪場、電気自動車充電器 |
| 施設管理・運営 | 緑地公園、遊園地、各種広場、墓地、葬儀場、スポーツ施設、学校、幼稚園、青少年センター、コミュニティセンター、図書館、劇場、博物館、病院、ケアホーム、コミュニティレストラン・カフェ、住宅、国民保護施設、避難所、消防、救急救命、その他行政施設 |
| 交通 | 路面電車、バス、タクシー、鉄道、フェリー、遠洋航路線、空港管理、カーシェア・バイクシェアなどのシェアリングサービス、e-モビリティ(充電サービス等) |
こうした多様な事業の中でも、小売り自由化されている電気、ガスを事業として有し、そこで利益があげられている場合が多い。最も多く実施されているのが電力事業であり、全体の約50%(733社)が手掛けている1)。シュタットベルケにおける電力事業では火力から再生可能エネルギーまでさまざまな電源を持っている場合が多く、利益を上げやすい構造が作られている。
②損益通算や配当を通じた利益の域内還元
シュタットベルケには、サービスを直接供給する事業会社と、特定目的会社を束ねる持株会社があり、特に大規模都市・中規模都市においては、持株会社方式の組織構造をもつ場合が多いようだ2)。
持株会社形式の場合、親会社が独立的な事業会社に出資する形態をとる。こうした構造により、収益事業の利益で、利益が出ない事業に対して内部相互補助を行う事ができる。また、グループ全体での損失補填による損益通算が可能となり、節税効果が得られ経営基盤の安定化にもつながっている。採算性の高い事業を別組織とすることで、他からの投資を得やすくなるというメリットもある。
また地域に密着したサービスに重きを置いており、トラブル発生時の技術者派遣などの緊急対応やスポーツ振興などの地域貢献で市民との信頼関係を構築している。利益の配当を公共サービスの供給という形で市民に還元できること、雇用創出や、その結果として地域の所得が向上するといった地域内の経済循環の意義があることへも市民の理解が得られており、競争の激しいエネルギー市場において選ばれる経営戦略で顧客を増やしている。
③経営の執行と監督の制度的分離
自治体に比べて機動的な経営が可能になっていることに加え、ガバナンスがしっかりしていることも大きな特徴である。監査役は地方公共団体の首長や議員等から選任されるが、権限は決算の承認、執行役の任免等の重大な行為に限定される。執行役は一般公募で選ばれる場合が多く、MBA取得者や他のシュタットベルケで経験を積んだ経営者など、外部から経営の専門家を選任し委ねることで、機動的な経営を可能としている。ガバナンスの不全のおそれが制度的に防止されていると言える。シュタットベルケでも経営の失敗による破綻はあるが、適切なタイミングで税金の投入を止められる体制が機能している。
日本での注目の高まり
前記事でも記載の通り、人口減少、少子高齢化が進む日本では、税収の減少による公共サービスの劣化は避けられない。また日本の公共インフラは1970~90年頃に建てられたものが多いため、建替えの時期を迎えた施設が多くあり、建替えのために予算確保は大きな課題である。こうした財政難・人材難に直面する地方自治体にとって解決策となりうるモデル事例として挙がっているのがシュタットベルケである。
日本ではドイツから約20年近く遅れて、2012年にFITを導入、2016 年から電力小売全面自由化を開始した。こうした背景から新電力関連ビジネスが多く生まれ、地方自治体が出資等で関与し、地域の再生可能エネルギーなどを電源として限定された地域を対象に電力販売を行う「自治体新電力」の設立も相次いだ。数々の自然災害を経験した結果、再生エネルギーをベースとした分散型のエネルギー供給を自治体のレジリエンス強化につなげようとする地方自治体が増える中、ドイツで再生可能エネルギー普及の一翼を担いつつ、エネルギー事業を核に多様な公共サービスの担い手となっているシュタットベルケが、地域エネルギー事業の経営形態の一つとして注目を集めるようになった。
「自治体新電力」は地域内での電力の供給にとどまっているものが多いが、中には、地域に新たな雇用を生み出し、地域経済の活性化につながる期待がもてる日本版シュタットベルケと呼ばれるような取り組みもみられる。
日本版シュタットベルケの先駆けとして注目されているのが、福岡県南西部に位置するみやま市の「みやまスマートエネルギー株式会社」である。
「自治体新電力」設立に関わるみやま市の動き
- 2010年:市内の住宅への太陽光発電システムの新設に対する補助を開始。
- 2012年:「みやま市大規模太陽光発電設備設置促進条例」を制定。発電出力50kW 以上のメガソーラーを設置した事業者を助成するなど、市内の太陽光発電事業を後押しする体制を整えた。
- 2013年:「みやまエネルギー開発機構」を設立、遊休地だった市有地に太陽光発電所を建設し、5MWのメガソーラーを設置。
- 2014年:国が募集していたバイオマス産業都市に応募し認定を受ける。HEMS(家庭用エネルギー管理システム)の実証事業を実施。
- 2015年:実証終了後のHEMSを使った市民向けサービス運用事業体として「みやまスマートエネルギー株式会社」設立
- 2018年:みやま市バイオマスセンター「ルフラン」を本格稼働。
日本版シュタットベルケの先駆け、みやま市の取り組み
みやま市は、有明海に面して平地が多く太陽光にも恵まれていることから、太陽光パネルの設置促進を進めていた。東日本大震災以降は、災害時でも市内に電力を供給し続けられる環境確立やエネルギーの地産地消による地域経済活性化などを目的に、太陽光発電事業に注力。2015年には、HEMSを使った市民向けサービスなどによる地域問題の解決と太陽光発電事業の更なる推進と目指し、みやまスマートエネルギー株式会社を設立した。出資比率は、みやま市の55%のほか、みやまパワーホールディングスが40%、筑邦銀行が5%となっている。
同社は、2016年4月から自治体新電力としては日本で初めて家庭向けに電力の供給を開始。また、HEMSのビッグデータを活用した高齢者の見守りサービスや市内商店の品物の宅配サービス、地産地消がテーマのレストランを有するコミュニティスペース「さくらテラス」の建設・運用などで注目を集めた。設立当初から、電力事業による収益を原資に他の公共サービスを提供する想定で事業設計されている点に特徴がある。その他にも、県外の同様の地域課題を抱えたエリアの自治体新電力との連携を推進。また東京都の外郭団体で新電力事業を手がける東京都環境公社の需給管理支援を受託したり、東京都目黒区の公共施設にFIT電気を供給したりと、多くの自治体新電力とは一線を画す取り組みが見られた。
2016年、2017年と赤字を計上したが、2018年に単年度での黒字決済を達成。その後債務超過は解消し、2020年3月期決算では1億4000万円の純利益を計上していた。それまで市外からの電力購入では年間約40億円が他の地域に流出している状況にあったところを、地域内に残して還元できるという期待もあった。また、住民の減少に伴い市の職員数も減る一方だったところ、2017年度末時点で、関連企業を含めて約50人の雇用が生まれていた3)。
みやま市が向き合う課題
しかし、多くの課題も浮き彫りになっている。2020年12月から2021年1月にかけての液化天然ガスの不足が原因とされる卸電力市場の価格急騰で、全国的な新電力会社の収益悪化と同様に、みやまスマートエネルギーも約2億円の単年度赤字となり、再び債務超過となった。みやま市は、費用縮減及び新たなソリューションビジネスの推進等により2025年までに債務超過を解消する4)としているが、ウクライナ危機の影響もあり電力業界にとっては厳しい状況が続いている。
資金面の困難だけでなく、ガバナンスにおける課題も指摘されている。
みやまスマートエネルギーと、40%の株式を所有するみやまパワーホールディングスの間の一部業務委託について、利益相反取引に当たっていたことが発覚した。2020年2月にまとめられた調査報告書では、委託手続きの不備によりみやまスマートエネルギーに損失が生じた可能性と、早急な体制見直しと、第3セクターとしてさらなる透明性と公共性を図る必要性が記された。調査報告書を受け、同社は経営体制の見直しを図り、みやまパワーホールディングスが保有する自社株を全株買い取り、資本構成をみやま市55%、みやまスマートエネルギー40%、筑邦銀行5%とした。また同時期に批判を受けていた全国への積極的な事業展開を中止し、みやま市を中心とした地域に集中する方針へと舵を切ることとなった5)。
日本で導入するにあたっての課題
黒字事業の創出
諸富徹氏は「自治体エネルギー公益事業体」の創設とその意義」の中で、日本がシュタットベルケから学ぶべき点として「エネルギー分野で収益をあげうる公的事業体を確立し、そこから生み出される安定的な収益を用いて、地域経済と市民生活の向上のための再投資を行うという事業モデルを確立すること」をあげている6)。
全国40の自治体新電力を対象にした調査によると、電力供給開始前のところを除き、2020年2月時点で赤字決算の自治体新電力はほぼなかった7)。
しかし2020年冬の市場高騰の影響を受け、みやまスマートエネルギーも含めて多くの自治体新電力がダメージを受けている。帝国データバンクによると、2021年度の自治体新電力の倒産件数は14件と、単年度として過去最多となった8)。ウクライナ危機の影響も、更なる追い打ちとなっている可能性が高い。
ドイツのシュタットベルケでは、市直営の駐車場を、通信事業のノウハウを生かして管理を無人化したことにより黒字化を実現した例や、国が行うスマートシティ事業のシステムの導入などを請け負うパートナーに選定され、ネットワークソリューションやe-mobility事業などを行っている例がある。収益確保のためには、電力事業において多様な電源を確保すること、電力販売にとどまらず事業を多角化することが必要であると考えるが、ドイツにおいてはこうした経営判断も、民間経営だからこそ柔軟に可能となっているものと思われる。
また、現在日本でシュタットベルケのような複合インフラサービスの業態に興味を示しているのは大都市に本社を持つ大手企業が多いが、地域内経済循環の観点から考えると、当初の組織・事業立ち上げ時には大手企業が参画するとしても、段階的に地域の資本がマジョリティをとるような形が望ましいかもしれない。
ガバナンス
水道法改正の議論のときなどにも明らかになったとおり、日本国民にとって公共サービスを民間企業が担うことへの不信感が大きい。これは、1980年代に多数設立された公社や第3セクターが、バブル崩壊とともに不良債権を抱えて事業に失敗し、一般財源を投入して清算されたケースが続出したことに起因する。第3セクターは当初、民間企業と自治体がともに出資して事業協力することで、民間企業の効率性と自治体の公益性を併せ持つ事業体として期待された。しかし実態としては、経営的な責任主体が不明確で、事業の効率性と公益性の達成についてチェックする体制が機能不全に陥ることも多く、多くの失敗事例を生み出した。
みやまスマートエネルギー株式会社のガバナンス不全による一連の流れを受けて、ローカルグッド創成支援機構・事務局長の稲垣憲治氏は、議会との関係作り、ステークホルダーとの合意形成、高いコンプライアンスの確保の重要性について次のように言及している5)。
- 議会との関係作り:過去の第3セクターの失敗で議会・自治体ともにトラウマがあり、注目されやすい背景があることから、議会との関係作りが非常に重要である。累積赤字が解消するまで、将来展望などを踏まえた冷静な議論が議会でできるかがポイントになる。
- ステークホルダーとの合意形成:全国展開という経営方針については、当初から市内で批判があり、市内での事業を後回しにしていたわけではないにも関わらず結果として中止となった。丁寧な対話による経営方針の共有やステークホルダーとの合意形成の重要性を改めて示した事例と言える。
- 高いコンプライアンス確保の重要性:利益相反取引において取締役会の承認を得ていないことが問題視された。利益相反自体は取締役会などの手続きを踏めば法令違反ではないが、疑念を生むことにもなりかねず、高い透明性を求められる自治体新電力になじまない方法だった可能性があると指摘する。
その他、ドイツとの文化的・制度的背景の違い
文化や制度の違いから、シュタットベルケの仕組みをそのまま横展開することは難しいという点は、多くの場で共有の認識がもたれている。
文化面で言えば、ドイツの背景には歴史の中で築かれた強い自治意識があり、エネルギー供給の確保も自治体の役目とされ、エネルギー供給への自治体の影響力が強い。一方日本の地方は国の意向に従う傾向がある。
制度面では、日本の自治体新電力の現状として、新規参入しやすい市場環境が整備されつつあるが、自治体にとっては設備投資のための資金調達が難しい面がある。またシュタットベルケの特徴でもある利益の内部補填についても、ドイツでは持ち株会社方式において50%超を出資していれば損益通算ができるが、日本においては100%の出資でないと損益通算ができないなど会計制度としての違いがある。教育制度という点でも、ドイツでは中学校卒業後に技術者育成などの専門校を選ぶ道が整備されており、こうした制度で育成される多能工の存在が効率化に大きな役割を果たしていると思われるが、日本でこうした多能工人材をどのように育成できるかは課題がありそうだ。
旧東ドイツにおけるシュタットベルケ導入の事例
文化や制度の違いによる課題は前述の通りだが、地域インフラを管理する組織のあり方が旧西ドイツと歴史的に異なる点がある旧東ドイツにおいて、東西統合を経て組織形態を制度や市場環境に合わせて変化させていった結果、他の旧西ドイツにあるシュタットベルケと同様の企業形態に収束していった例もある。
国土交通政策研究所の調査事例として取り上げられた、人口約55万人の比較的大きな人口規模を持つ、旧東ドイツ・ザクセン州の州都ドレスデンに拠点を置くシュタットベルケ「DREWAGStadtwerke Dresden GmbH (以下 DREWAG)」が興味深い9)。
ドレスデンでは、ドレスデン市の100%出資である親会社の傘下に、電気・ガス・熱及び水道の供給事業を行うDREWAGの他、トラム・バスを行う会社、廃棄物処理や清掃事業を展開する会社、プール事業を行う会社などがある。DREWAGの抱える電力事業(小売)、ガス事業(小売)、熱供給事業等が黒字事業であり、その利益が親会社を通じて赤字事業である公共交通や廃棄物事業、プール事業に補填され、残った利益は市が利益処分を判断する仕組みとなっている。
旧東ドイツでは旧西ドイツと異なり、人民所有企業(エネルギーコンビナート)という形態をとり、事業ごとに別会社によって供給されていた。DREWAGも市内への電気・ガス・水道の供給を行う独立した会社であったが、電力自由化による競争環境の変化を見据え、ドイツの東西統合を契機に設立されていたシュタットベルケのグループ会社になったという。
旧東ドイツという、歴史的にインフラ管理のあり方が異なる地域においても、複数インフラを単一の企業が管理し、グループ全体で損益通算することによって経営上のメリットが得られている、と本調査報告には記載されている。また市の都市計画部門と連携して連邦のエネルギー計画に即した自治体のエネルギー計画の策定にシュタットベルケが協力し、そのエネルギー計画や目標を参考にしながらシュタットベルケとして投資計画を立てていくこともなされているとのことであり、行政との深い関連によって経営判断の効率化が実現している様子がうかがえる。
こうした事例は、歴史的な背景が異なる地域においても、収益性の高い事業と低い事業を包括的に管理し、公益性が高いが赤字になりやすい事業を経済的に成り立たせるという仕組みが、インフラサービスの管理のあり方として有効に成り立ちうるということを示していると考えられる。
新たな連携手法‐これからの公共サービスを考える
これまでの事例を振り返ると、公共サービスを異業種間で連携・統合する目的として、まず「事業の効率化」や「サービスの高度化」などが挙げられる。これは、公共サービスの広域連携に似た手法ともいえるが、このほかシュタットベルケの事例などでみられた「損益通算」や「域内還元」といった考え方は、我が国の今後の公共サービスを考えるうえで重要なヒントになるのではないだろうか。
次回の記事では、サービス連携・統合に関する調査結果を踏まえ、「これからの公共サービス/インフラのカタチ」について考えていく。
参考文献
1) 国土交通政策研究所「国土交通政策研究所報第71号」 P52
2) 土屋依子・朝日ちさと・馬場康郎「地方財政の効率化に資する地域マネジメントのあり方に関する研究 ドイツの都市公社“Stadtwerke”に着目して」
3) 日経BP総合研究所「福岡県みやま市、挑戦的な地域新電力に見る「理想と現実」」https://project.nikkeibp.co.jp/atclppp/PPP/434167/022800096/?P=3 (2023年5月17日閲覧)
4) 福岡県みやま「第市三セクター等経営健全化方針」
5) 稲垣憲治「自治体新電力の雄、みやまスマートエネルギーの混乱と再起への道のり」https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/05709/?P=2 (2023年5月17日閲覧)
6) 諸富徹「「自治体エネルギー公益事業体」の創設とその意義」
7) 国際公共経済学会「国際公共経済研究第31号」P19
8) 帝国データバンク「「新電力会社」倒産動向調査」
9) 国土交通政策研究所「国土交通政策研究所報第76号」P69-71
